
1969年 アメリカ・ニューシネマ 都会に花咲くダーティ・ヒーロー
監督:ジョン・シュレシンガー 原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー 製作:ジェローム・ヘルマン
キャスト:ダスティン・ホフマン/ジョン・ボイト/シルビア・マイルス/ブレンダ・バッカロ
音楽:ジョン・バリー 主題歌:うわさの男(ニルソン)
自分にとって、恋愛のバイブルが、”卒業”で、ギャング映画の古典が、”俺たちに明日はない”で、全く新鮮に感じた異色西部劇が、”明日に向かって撃て”なら、この”真夜中のカーボーイ”は、青春時代に、最も感動した映画である。
”卒業”で、ヒーローを演じたダスティン・ホフマンが、この映画では、180°役柄の違った、汚れ役を見事に演じている。相棒のジョン・ボイトの出世作でもある。これは、都会で、誰にも相手にされない二人の友情の物語である。
テキサスの田舎でプレイボーイ気取りだったジョー・バック(ジョン・ボイト)が、単調な皿洗いの生活から抜け出し、都会で一旗揚げようと、ニューヨークにやってくる。
教養のない彼の武器は、カーボーイスタイルのファッションと自慢のルックスに男性自身。簡単に女性が引っ掛り、金になると思っていた。
ところが、世の中そんなに甘くない。道行く誰もが、時代遅れの彼になど、目もくれない。声を掛けてくるのは、コールガールのみ、挙句の果ては、ホモの相手がいいところ。
唯一、彼を相手にしてくれたのは、街の鼻つまみ者で、ドブネズミのような生活をしているリッツォ(ダスティン・ホフマン)だけだった。リッツォはペテン師で、ジョーをペテンにかけるが、やがてお互い身寄りのない二人は、取り壊し寸前の老朽ビルの一室で、アブラムシと共に生活することになる。
二人の間に友情が芽生えるが、荒んだ生活を続けてきたリッツォの病が進んでいく。彼の夢は、フロリダの太陽の下で、ココナツの汁を飲み、健康を取り戻すこと。ジョーは、彼のために金を稼ぎ、カリフォルニア行のバスに彼を乗せたがーーー。
これは、虚飾に満ちた、病んだニューヨークの街で、時代感覚の遅れた青年と、ダーティーながら必死に生き抜こうとする男の友情の物語である。
テキサスのジョーが、夜行バスでニューヨークに旅立つところで、ニルソンの主題歌が流れてくる。
”うわさの男”音は軽快で美しい。しかもそのメロディには、哀感が溢れ、陽気さの奥に”悲しい貧しさ”が、呼吸している。
都会に立つ彼。群衆の中の孤独。欺きのネオンの明かりで眠らない街。人が溢れていればいるほど、孤独が胸を指す。大都会の孤独は、実に厳しく、冷たく迫ってくる。
本人自慢のカーボーイスタイルだが、都会の女はこんな田舎くさいファッションには、見向きもしない。
知り合ったリッツォも、社会からあぶれ落ちた、人生の敗残者の死の影が漂っている。二人の男の何という友情の痛ましさ。
ダスティン・ホフマンの汚れ役とジョン・ボイトの人のいい田舎者のあんちゃん姿が実に意気投合している。監督のジョン・シュレシンガーは、イギリス人であるが、アメリカ人以上に、病んだアメリカを描き出し、二人の友情を巧みに引き出している。
汚いマンハッタン風景の中から、高く香るものがある名作である。
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